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フィリピンの医学部留学 / 進学について解説 | 医師免許取得はできるのか

⌚ 2026年6月28日 公開(2026年6月29日 更新)

日本の医学部受験は非常に難易度が高く、私立大学の場合は学費が数千万円にのぼることも珍しくありません。そうした背景から、近年新たな選択肢として注目を集めているのがフィリピンの医学部への留学です。しかし、「海外の医学部は入りやすい」というイメージだけで飛びつくと、卒業後や資格取得の段階で思わぬ壁にぶつかることになります。

この記事では、フィリピンの医学部の特徴や入学難易度、そして最も重要である「卒業後に日本や現地で医師として働くためのプロセスと法律・制度の現実」について、最新の情報を交えて詳しく解説します。

この記事のまとめと要点

  • 教育システム:アメリカ式のカリキュラムを採用しており、医学部は「学部」ではなく学士号取得者を対象とした「大学院(メディカルスクール)」の扱いです。
  • 入学難易度:日本の医学部のような超難関のペーパーテストはなく、NMAT(医学部進学適性試験)という全国共通試験のスコアと書類選考、面接が中心となりますが、進学自体は決して簡単ではありません。
  • 費用面:年間の学費は50万〜100万円程度であり、日本の私立医学部と比較して10分の1程度に抑えることが可能です。
  • 医師免許:フィリピンの医学部を出ても現地の法律(国籍制限)により原則として現地で医者にはなれません。また、卒業後に日本で医師国家試験を受験するには、厚生労働省による個別の受験資格認定や、多くの場合「医師国家試験予備試験」への合格が必要となり、日本国内でのハードルも極めて高いのが現実です。

フィリピンの医学部の基本情報

フィリピンの医学教育はアメリカの制度をモデルにしており、日本とは修業年数や学位の仕組みが大きく異なります。まずはその大枠を理解しておきましょう。

結局何年で卒業?

フィリピンで医師(MD)の学位を取得するには、最短でも合計8年間の学習期間が必要です。日本の医学部は高校卒業後に直接入学して6年で卒業しますが、フィリピンではまず4年制の一般大学(プレメッド課程)を卒業して学士号を取得し、その後さらに4年制の医学部(メディカルスクール)に入学する形をとります。そのため、トータルの期間は日本よりも長くなります。

フィリピンの医学教育システム

フィリピンの医学教育は、実践的な英語教育と米国式のカリキュラムが特徴です。授業や教科書、病院での実習にいたるまですべて英語で行われるため、高度な医学知識だけでなく、グローバルに通用する実用的な英語力を身につけることができます。この環境は、将来的にアメリカの医師免許(USMLE)に挑戦して海外で活躍することを目指す際にも、大きなアドバンテージとなります。

「学部」ではなく「大学院」扱いという特徴

フィリピンの医学部は「College of Medicine」と呼ばれ、日本の医学部(医学科)のような一般的な学部ではなく、大学卒業者が進む「専門職大学院」のような位置づけです。卒業時に授与されるのは学士号ではなく、MD(Doctor of Medicine:医学博士/医師)という学位になります。そのため、高校を卒業して直接医学部に入ることは制度上不可能であり、まずはプレメッドと呼ばれる学士課程を修了しなければなりません。

フィリピンの医学部に進学するための基本ルート

日本の学生がフィリピンの医学部を目指す場合、どのようなステップを踏む必要があるのか、具体的なタイムラインを見ていきましょう。

4年制プレメッド(学部)からの進学が一般的な流れ

一般的な進学の流れは以下の4つのステップに分かれます。

  1. プレメッド課程(4年間):現地の4年制大学で、生物学(Biology)、看護学(Nursing)、心理学(Psychology)、医学技術(Medical Technology)などの学部・学科に在籍し、科学的な基礎知識を学びながら学士号を取得します。
  2. NMATの受験:医学部入学への必須条件である「全国共通医学部進学適性試験(NMAT)」を受験し、志望校が規定するスコア(パーセンタイル)をクリアする必要があります。
  3. 医学部(4年間):メディカルスクールに入学後、最初の3年間は徹底した座学と試験、最終の1年間は提携病院での広範な臨床実習(クラークシップ)を行います。
  4. インターンシップ(1年間):医学部卒業後、現地でさらに1年間のポストグラデュエート・インターンシップ(病院での実務研修)を積むのが、医学知識・技能を定着させる一般的な流れです。

フィリピン医学部留学は「入りやすい」のか

「海外の医学部は日本の医学部受験よりも簡単だ」という噂がありますが、これは一面的な見方に過ぎません。現実は甘くない入試と進級の仕組みがあります。

NMAT(医学部進学適性試験)とは

NMAT(National Medical Admission Test)とは、フィリピンの医学部に入学するために国から義務付けられている全国共通の適性試験です。単なる知識の暗記力を問うものではなく、英語での論理的思考力、読解力、数理能力、自然科学(物理・化学・生物)の適性を総合的に測る内容となっています。各大学は入学選考において、このNMATのスコア(パーセンタイル値)に独自の厳しい足切りラインを設けているため、対策なしにクリアすることは困難であり、医学部進学の大きな障壁となります。

(参考ソース:NMAT公式ホームページ(英語)

「海外医学部は入りやすい」は本当か

結論から言うと、「入学」に関しては日本よりも比較的容易ですが、「卒業」や「進級」のハードルは非常に高いのが現実であり、安易な気持ちでの進学はおすすめできません。

フィリピンの大学は典型的な「入りやすく、出るのが難しい」という欧米型のスタイルを徹底しています。毎学期行われる膨大な進級試験で一定以上の成績(GPA)を維持できなければ、容赦なく留年や放校(退学勧告)が言い渡されます。「何が何でも医師になりたい」という極めて強い意志と、毎日の猛勉強を継続する覚悟がなければ、途中で挫折して学費と時間を無駄にするリスクが非常に高い世界です。

フィリピン医学部入学に必要な学力・英語力・必要書類

  • 英語力:授業や議論を専門レベルで理解するため、IELTS 6.0〜6.5以上、またはTOEFLなどの同等スコアが実質的な目安となります。
  • 大学の成績(GPA):プレメッド課程(4年制大学)での評定平均が非常に重視され、トップ校ほど高いGPAが求められます。
  • 必要書類:大学の卒業証明書・成績証明書、NMATスコア結果、犯罪経歴証明書(無犯罪証明書)、健康診断書、推薦状など多岐にわたる書類の提出が必要です。

フィリピン医学部卒業後、医師免許はどうなる?

フィリピンの医学部で「MD」の学位を取得した後のキャリアには、法律上および制度上の非常に重い現実が待ち受けています。ここを理解していないと、せっかく卒業しても医師になれないという事態に陥ります。

フィリピンで医師免許を取得する場合の流れと条件

もっとも注意すべき点は、フィリピンの医師国家試験(PLE:Physician Licensure Examination)を受験するには、現行の法律により原則として「フィリピン国籍」が必要であるという点です(Medical Act of 1959 / 共和国法第2382号)。

そのため、日本国籍のまま現地で医師免許を取得してそのままフィリピン国内で医師として働くことは、制度上極めて困難です。「フィリピンの医学部を出ても、現地でそのまま医者になれるわけではない」という法律の壁を必ず念頭に置き、基本的には卒業後に日本や第三国へ戻って医師免許の取得を目指すルートを前提に計画を立てる必要があります。

(参考ソース: https://www.prc.gov.ph/article/march-2026-physicians-licensure-examination-results-released-four-4-working-days

 

日本で医師として働くために必要な「医師国家試験予備試験」

海外の医学部卒業者が日本で医師になるには、厚生労働省による「医師国家試験受験資格認定」という個別審査を必ず受ける必要があります。これは、法律に基づき「日本の医学部卒業と同等以上の学力や教育環境、カリキュラム時間(4,500時間以上の一貫した専門教育など)を満たしているか」を一人ひとり厳密に審査するものです。

審査の結果、日本の国試を直接受けられる「本試験受験資格」が認められるケースは極めて稀です。フィリピンの4年制メディカルスクール卒業生の場合、その多くは一段階下の「医師国家試験予備試験」への受験資格認定となり、まずはこの予備試験に合格することが課されます。

(参考ソース:厚生労働省:外国の医学校を卒業した方の受験資格認定について

フィリピン医学部卒業後、日本の医師免許を取るハードル

日本への帰国ルートを選択する場合、最大の壁となるのが「日本語での医学用語の膨大な覚え直し」と「予備試験の低い合格率」です。

フィリピンでは4年間すべての医学を英語でインプットしてきたため、日本の国家試験や予備試験に出題される「漢字だらけの日本語の専門用語や疾患名」をゼロから全て学び直さなければなりません。また、厚生労働省が実施する「医師国家試験予備試験」は非常に難易度が高く、合格率は決して高くありません。さらに、予備試験を突破した後には、日本の指定病院で「1年以上の診療実務研修(実地修練)」を修了しなければ、日本の医師国家試験の本試験を受験することすらできません。卒業から日本の医師免許取得までに最低でも数年の歳月を要するため、日本国内での医師就任へのハードルは非常に高いと言えます。

海外(フィリピン以外)で医師として働く場合

フィリピンの医学教育はアメリカの制度をベースに構成されているため、米国医師免許(USMLE)への挑戦には非常に有利な環境が整っています。実際に、フィリピンの医学部を卒業した後にUSMLEの各ステップを突破し、アメリカ国内の病院でレジデント(研修医)として臨床をスタートさせるルートを選択する留学生も少なからず存在します。

(参考ソース:https://www.usmle.org/

フィリピン医学部留学にかかる学費・生活費

数ある留学先の中で、フィリピンが選ばれる最大の理由は、圧倒的なコストパフォーマンスと経済的な負担の少なさにあります。

フィリピンの医学部の学費相場

フィリピンの医学部(メディカルスクール)の学費は、大学や地域によって異なりますが、年間で約50万円〜100万円程度です。国立大学であればさらに安価であり、名門私立大学であっても日本の医学部とは比較にならないほどの低価格で質の高い医療教育を受けることができます。

日本の私立医学部との比較

区分 一般的な総額費用 特徴
日本の私立医学部 6年間の総額で2,000万円〜4,500万円程度 入学金や施設設備費、寄付金などが非常に高額。
フィリピンの医学部 4年間の総額で200万円〜400万円程度 純粋な学費が安く、日本の10分1以下の負担。(※手前のプレメッド4年間の費用は除く)

生活費・滞在費

フィリピンの物価は日本の約3分の1から2分の1程度であり、留学中の日々のランニングコストも非常に安く抑えられます。学生寮や大学周辺のセキュリティー付きコンドミニアムでの生活が一般的で、食費や光熱費、インターネット代を含めても、月5万円〜10万円もあれば十分に不自由のない生活を送ることができます。

医学部留学ならではのコスト

医学部生は膨大な勉強時間を確保する必要があるため、騒音が少なく、24時間警備員が常駐している治安が良く静かな環境のコンドミニアムを選ぶ必要があり、一般的な語学留学生よりも家賃が高くなる傾向があります。また、すべて英語で書かれた分厚い医学参考書や医学雑誌の購入代、実習で使用する白衣や各種医療器具(聴診器など)の購入費用も予算として見込んでおくべきです。

学費以外にかかる費用(教材費・試験費・渡航費など)

  • ビザ関連費用:フィリピンの学生ビザ(9(f))の申請や、半年に一度の更新手続き、ACR I-Card(外国人登録証)の維持等に年間数万円の費用がかかります。
  • 航空券:日本とフィリピン(マニラやセブ)の往復は、LCC(格安航空会社)などを利用すれば1回あたり往復5万円〜10万円程度で移動可能です。
  • 海外旅行保険:長期の滞在となるため、現地の病気や怪我、入院に備えて年間15万円〜25万円程度の十分な補償がある海外旅行保険や留学保険への加入が必須です。

フィリピンの医学部のレベル・ランキング

フィリピンには、アジア圏および世界水準で高く評価されている名門のメディカルスクールがいくつか存在します。

フィリピン医学部の世界ランキングの位置付け

フィリピンの最高峰である「フィリピン大学(UP)」などのトップ校は、QS世界大学ランキングの医学(Medicine)分野においてもランクインしています。フィリピンの医学教育は特に「臨床スキルの高さ」と「圧倒的な症例数に触れる機会」に定評があり、アメリカや欧米の名門病院と強力な提携関係を結んでいる大学も多数存在します。

フィリピンの主要な医学部

  • University of the Philippines (UP):フィリピン最高峰を誇る、最難関の国立大学。教育・研究ともにトップクラスです。
  • University of Santo Tomas (UST):アジア最古の歴史を誇る、伝統と格式のある名門私立大学。多くの著名な医師を輩出しています。
  • University of the East Ramon Magsaysay (UERM):医学教育および医療設備の質が非常に高いことで国際的に知られる名門私立大学。
  • Cebu Institute of Medicine (CIM):セブ島にある、フィリピン国内の医師国家試験(PLE)において常にトップクラスの合格率を叩き出す超実力派大学。

フィリピン医学部の偏差値

フィリピンの高等教育機関には、日本のような一律の「偏差値」という概念は存在しません。その代わり、入学選考におけるNMATのパーセンタイルスコアや、大学ごとの「フィリピン医師国家試験(PLE)の合格率」が大学のレベル・格付けを測る明確な指標となります。上記のトップ校に入学を果たすためには、NMATにおいて上位1%〜10%(パーセンタイル90〜99)の極めて高いスコアを要求されるのが通例です。

よくある質問

フィリピン医学部留学を検討する際、受験生や保護者の方から特によく寄せられる代表的な疑問に詳しくお答えします。

フィリピンの医学部は本当に「入りやすい」のか?

日本の医学部入試のように、「1点刻みの激しいペーパーテストによる競争」や「数学や理科の超難問を解く」といった性質の難しさがないという意味では、比較的入りやすいと言えます。しかし、志望動機や倫理観を厳しく問われる英語での面接・小論文、そしてNMATのハイスコアが厳密に評価されるため、土台となる高い基礎学力と、高度な専門授業に最初からついていけるだけの圧倒的な英語力(IELTS 6.0以上)は必須条件であり、決して「誰でも簡単に進学できる」わけではありません。

フィリピンの医学部を卒業して、医師国家資格は取得できますか?

フィリピンの医学部を卒業することで、国際的に認められた医学博士・医師の学位である「MD(Doctor of Medicine)」を取得することは可能です。しかし、フィリピン現地の医師免許(PLE)の受験には国籍制限(法律による縛り)があるため、日本国籍のままでは取得できません。したがって、日本人が医師免許を取得する場合は、卒業後に日本に帰国して厚生労働省の認定を受け日本の国家試験を突破するか、あるいは米国医師免許(USMLE)など、外国人への受験を解放している他国の試験を明確に目指すことになります。

フィリピンの医学部を卒業後に日本で医師として働けますか?

制度上は可能です。ただし、卒業後にすぐ日本の国試を受けられるわけではなく、厚生労働省による厳格な個別書類審査を通過し、原則として「医師国家試験予備試験」に合格し、さらに1年以上の診療実務研修を修了するという何段階ものプロセスを踏まなければなりません。この手続きと対策には膨大な時間と労力がかかるため、フィリピンの医学部を卒業後、すぐに日本国内の病院で医師として働き始めるのは極めて難しいと考えておくべきです。綿密な長期キャリアプランが不可欠となります。

NGOで医師として働くことはできる?

国境なき医師団などの国際NGOや国連機関で医師として活動する場合であっても、前提として「いずれかの国(日本やアメリカ、欧州など)の正規の医師免許」を保持していることが必須条件となります。医学部を卒業してMDの学位を持っているだけでは、医療行為を行うことはできません。ただし、フィリピンの医学部で培った「100%英語での高度な医学知識」と「現地病院での多様な臨床経験」は、将来的に国際保健やグローバルな医療NGOの分野で活躍する際、他の日本の医学部卒業生にはない極めて強力な武器・アセットになります。

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