フィリピンは英語?フィリピン語?言語の種類や割合などを徹底解説!
近年、日本人の英語留学先として圧倒的な人気を誇るフィリピン。
でも、アジアの国なのになぜ英語が学べるのか、疑問に思ったことはありませんか?
「せっかく留学しても、フィリピンじゃ中途半端な英語しか身につかないんじゃないの?」
「フィリピンの英語は訛りが強そうだし、他の国じゃ通じなそう」
こんな不安を持つ人も少なくないはずです。
そこで今回は、フィリピンで実際どれくらい英語が話されているのか、具体的なデータやフィリピンの言語文化・歴史背景を含めて徹底解説します。
この記事を読めば、「フィリピン人講師たちの英語レベルはどれくらいなのか」「フィリピン留学でちゃんとした英語が学べるのか」といった疑問を解消するだけでなく、言語の面からフィリピンの新たな一面を知ることができるはず。
フィリピン留学を検討中の方はもちろん、フィリピンをより深く理解したい人は是非参考にしてみてください!
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データで見るフィリピン人の英語力
日本人である私たちにはなかなか想像しづらいですが、フィリピンはアジアの国、しかも経済的には発展途上国でありながら、さまざまなデータからアジアトップの英語国家と国際的に認識されています。
まず、2019年EF英語能力指数ランキング(英語を母国語としない100カ国を対象)では、フィリピンは英語能力世界20位、アジア2位にランクインしています。
アジア1位はシンガポールですが、人口比率を踏まえると実質的にはフィリピンがアジアトップと考えられます。
同ランキングにおける日本の順位は53位なことからも、フィリピンの英語力が日本と比較していかに高いかがうかがえます。
次に、少し古いデータですが、2013年に発表された米国グローバルイングリッシュによるビジネス英語指数ランキングでは、ヨーロッパ諸国を凌ぎフィリピンが世界1位にランクされました。
この英語力の高さは、多数のグローバル企業が英語対応コールセンターをフィリピンに置いていることからも明らかです。
フィリピンのコールセンター事業シェア率は2017年にインドを抜いて世界1位になっています。
ビジネス英語力が高いということは、高度な文法が流暢に扱えて、かつ発音もきれいで国際的に聞き取りやすいということ。
フィリピン人の英語力が世界的に認められていると言える最大の根拠です。
フィリピン人講師の英語レベルはどれくらい?
フィリピン留学の英語学校で採用されている現地講師たちは、そのほとんどが大学の学位を取得しているエリート層です。
日本では大学進学は珍しくありませんが、貧困層がまだまだ多いフィリピンでは大学に通うことはステータスでもあり、一流の教育を受けた証になります。
実際、フィリピンの大学では当然のように英語で授業が行われ、学生たちは文法が複雑なアカデミック英語も流暢に使いこなします。
国全体で英語が浸透しているフィリピンの中でも、特に英語をネイティブレベルで話せる層が大学学位を取得し、英語講師の職に就いているのです。
そのため、フィリピン留学が人気なのは日本や韓国だけではありません。
その高い英語教育力が国際的に支持され、アジアより英語に近い言語背景を持つはずのヨーロッパ諸国からも、たくさんの留学生がわざわざフィリピンまで英語を学びにやってきます。
そして日本では近年、政府もフィリピン人講師たちの英語力の高さに着目し、2016年度から外国青年招致事業(JETプログラム)の招致対象にフィリピン人英語講師を追加しています。
既にいくつかの小中学校では、フィリピン人講師がネイティブ講師として子どもたちに英語を指導しています。
フィリピン英語の訛りってどんなもの?留学への影響は?
フィリピンでは公用語の一つとして英語が採用されていますが、第一言語はあくまで母国語であり、英語は第二言語の一つです。
そのためネイティブスピーカーと比べると完全に訛りがないとは言えません。
逆に言うと、フィリピンに限らず、アメリカ、イギリス、オーストラリアなど英語を母語とする国以外の地域では必ず何かしらの訛りがあります。
また、発音、アクセント、文法はネイティブ国であるアメリカ、イギリス、オーストラリアでもそれぞれ異なり、「アメリカ英語とイギリス英語は別の言語」と認定する言語学者もいるほどです。
私たち日本人にとって「英語」は一つの固まった言語という認識ですが、実態はむしろ「世界中の人と広くコミュニケーションをとるための第二言語」という方が適切で、訛りがネイティブと完璧に同じじゃないからといって困ることはほとんどありません。
世界中の多数の英語スピーカーがなんらかの訛りを持っていて、フィリピン英語もそのうちの一つと考えるとよいでしょう。
そして先述したように、フィリピン英語は国際的にビジネスシーンでも通用していることを踏まえると、フィリピン英語の訛りはネイティブとの会話に困らない程度のものと考えることができます。
次に留学への影響ですが、よほど長期の留学であれば別ですが、数ヶ月程度の留学では訛りまで移ることはない可能性が高いです。
日本国内で考えても、引越し先の方言が2〜3ヶ月で移ってしまうことはあまりないですよね。
これが外国語であればなおさら、訛りがすぐに影響してしまうことは考えづらいです。
ただしヒアリングについては、耳がネイティブ英語よりもフィリピン英語に慣れてしまう可能性はあります。
それ以上に英語全体に対するヒアリング力が向上するのですが、それでもどうしても訛りに慣れたくないという人は、フィリピンではなくネイティブ国への留学をおすすめします。
フィリピン人はなぜ英語が話せる? 歴史や教育から解説
なぜフィリピン人は英語を話すことができるのか? 筆者がフィリピンに滞在中、フィリピン人に聞いたことも含めてまとめました。
アメリカ統治時代の影響
フィリピンはスペイン、アメリカ、そして日本から植民地にされた過去があり、各時代に異なる言語政策が行われてきました。
1974年に植民地支配が終わったときにフィリピンの教育省から「英語とフィリピン語の併用教育政策」が決められ、正式に英語が公用語となったのです。
公用語は英語とフィリピン語の2種類
日本では話されている言葉の99%が日本語ですが、フィリピンとは北から南まで、日本と同じ幅であるにもかかわらず、およそ170種類の言語が使われているといわれています。
ちなみにフィリピンでの英語以外の言語の使用率はこのようになっています。
1位 | タガログ語 | 25.12% |
2位 | セブアノ語 | 21.44% |
3位 | イロカノ語 | 8.68% |
4位 | ヒリガイノン語 | 8.12% |
5位 | ワライ語 | 3.54% |
その他の現地語 | 25.98% |
(出典:Philippine Statics Authority)
これは、フィリピンには島がたくさんあるため民族の文化的交流が進まず、文化や言語の独立性が保たれたという歴史に基づいています。
そのため言葉だけでなく、民族もタガログ族、ビサヤ族、ワライ族などなど多数が存在します。
中国語やアラビア語を話す地域もあり、宗教も言葉もまったく異なる民族が共存しているという感覚は、日本人には理解しづらいものです。
170もある言語を持つ国が1つにまとまるためには、フィリピン全土で使える公用語が必要です。
フィリピンの場合、公用語は英語とフィリピン語(タガログ語)の2種類です。
フィリピン語とはもともと現在の首都マニラで使われていたタガログ語を元にしたもので、1987年のフィリピン共和国憲法において、正式に公用語として採択されました。
多くのフィリピン人は、英語とフィリピン語、それに地元の言葉の3ヶ国語を操ることができます。
新聞やテレビ、学校教育が英語
やはりフィリピン人が英語を話すことができる理由は、国の英語教育方針と関連しています。
もともとフィリピンでは幼少期からの学校での英語授業が広く実践されてきましたが、現在も改良が続けられています。
近年、フィリピン政府は「K to 12」と呼ばれる幼稚園の入学義務化と初期初等教育2年延長の施策を実行しました。
言語教育は早ければ早いほど良いとされているため、2,3ヶ国語を習得する必要があるフィリピン人により適した施策といえます。
もう一つの特徴は「母語を基礎とする多言語教育」です。
これまではセブ島の小学校であってもフィリピン語と英語による授業が中心でしたが、2016年からは幼稚園から小学校3年までの初期の初等教育において母語での指導が行われるようになりました。
これは母語という文化の継承と、母語での読み書きの基礎を固めてからの方が英語など第二言語を効率的に学べるという言語学の観点に基づいています。
また、筆者はフィリピンに滞在中に「なぜフィリピン人は英語ができるのか」と現地の友達に質問したことがありますが、彼いわく「フィリピン人は学校で英語を学ばなかったとしても、英語を使いこなすことができるようになるだろう」とのことでした。
その理由は生活をしている中でわかりました。
街中を歩いていると、看板の90%以上が英語表記ですし、電化製品の説明書やテレビ、新聞、雑誌など英語に溢れています。
歩いていて意味が分からない言葉に出会うことはほとんどありません。
日常生活の中で英語が自然に浸透しているのを肌で感じました。
フィリピン人にとって英語は限りなく母語に近いものであり、日常生活で英語を話すことに抵抗がないことがわかります。
多言語国家フィリピンの問題点
日本人の私たちからすると、生まれながらにしていくつもの言語を操ることができるのは、非常にうらやましく思います。
しかしそんな多言語国家フィリピンでも、教育上の問題を抱えています。
フィリピンが抱える言語面での問題点についていくつか見てみましょう。
ローカル言語の消滅
フィリピンは170もの言語を持つ、非常に多様性に富んだ国です。
どの言語を話すかというのは自分のアイデンティティに大きな影響を及ぼします。
当然ですが言語は文化と密接に関わりがあるので、一方が衰退すると、もう一方もそれに伴い衰退していきます。
特に地方の若者が高校卒業を機に、マニラやセブなどに移り住み、地方が空洞化しています。
地方に若い担い手がおらず、高齢者だけになると多様性が失われていくことになります。
多様性はその国の資産であり、歴史です。 英語教育に力が注がれる中、 地方言語の担い手がどんどん少なくなっていくことが懸念されています。
語学教育以外がおろそかになる
フィリピンの学校教育では、多くの時間が語学学習に費やされています。
タガログ語が母語でない人に関しては、英語とタガログ語の両方を学ばなければなりません。
限られた時間の中で、語学学習以外の算数や社会、理科の授業をどう確保するかを考える必要があります。
先ほども紹介をした政府の「母語を基礎とする多言語教育」は、母語で学べる教科を増やす目的で導入をされています。
貧困で小学校に通えない子どももいる
最後に紹介するのが、貧困と進学率の低さです。
日本の義務教育では小学校と中学校の段階で落第をしてしまう人はまずいません。
しかしフィリピンでは、決められた日数学校に行くことができずに落第したり、そもそも小学校に行くお金が出せずにやめてしまう子供たちがいるのです。
公立高校の授業料は無償ですが、教科書、カバン、制服など必要なものを払う必要があります。
貧困の家庭にとっては、そのような必要品ですらも大きな出費となってしまうということです。
子供達への教育支援やボランティア団体もいくつかサポートを行っているようですが、貧困の連鎖を解決するにはまだまだ至りません。
先述の「K to 12」制度の導入も、富裕層にとっては問題ありませんが、貧困家庭にとっては大きな負担となっているのが現状です。
まとめ:フィリピン人の英語力
いかがでしたでしょうか。
今回はフィリピンの英語力やレベルの解説とともに、フィリピンという国を「言語」という側面から見てみました。
100を超える言語を持つフィリピンでは、バイリンガル、トリリンガルであることが珍しいものではありません。
地元の友達と喋るときは地方言語、一般的なフィリピン人同士ではフィリピン語、大学の授業は英語などと無意識に使い分けています。
今や英語は、世界共通語としての地位を確立しています。
フィリピン人も恵まれた英語力を活かし、多国籍企業で大活躍しています。
フィリピンで生活をする上で英語を話すことさえできれば、コミュニケーションに問題ありません。
しかし言語という側面にフォーカスをしてフィリピンを見てみると、旅行などでも違った面白さが味わえるかもしれません。
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